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2026年5月31日 コウノ歯科医院、歯科衛生士
《口腔機能発達不全症の定義》
「食べる機能、話す機能、その他の機能が十分に発達していない」こと。
診断する症状として「口呼吸」や「歯列不正」 「いびき」などを上げている。
子どもの時に口腔機能が十分に発達しないと高齢になったときに早く嚥下機能が低下するとされている。
口腔機能を子どもの時から発達させることで将来的に介護にならず、元気に過ごせる人生設計を歯科から提供する
事が大切と考えられている。
《「口育」とは》
新生児期からの呼吸、嚥下の正常発達を促進する事により、口腔機能発達不全症を防止し、不正歯列、不正な顎顔
面の成長、口呼吸、食機能低下、閉塞性呼吸障害、睡眠障害を予防し、遺伝子どおりの姿形の獲得と正常で健康な
心身の発達、そして本来持っている学習運動能力の正常な最大のパフォーマンスを発揮できるように促し、終生自
分の人生に誇りを持てるようにする。
《口育の概念》
摂食・嚥下+歯科睡眠医学+筋機能療法
であり、目指していることは『Whole body treatment(全身の健康)』
《歯列が悪くなる原因》
口を動かす時に使う口輪筋・頬筋が緊張することによって歯列不正が起こると言われている。
《口腔機能発達不全症の原因》
必ずしもこれだと定まっているわけではないが、
「乳児嚥下の残存」「低位舌」「口呼吸」が大きなテーマになっている。
中でも口育協会では乳児嚥下の残存がベースと考えられている。
乳児嚥下とは母乳を飲む時の反射(原始反射)であるため意識をしていないものである。
発達障害の治療の中でも原始反射の除去があり、通常では起きない反射や動きが起こってくるのは原始反射が残存
していることが原因であると考えられている為である。
そのため口育では乳児嚥下が残存しないように考える必要性がある。
乳児嚥下とは、舌が歯がなく、舌が横広がりになり頬ともくっついている。舌も顎堤より前に出て口唇は閉じな
い。そのため母乳を吸う時には口輪筋や頬筋がとても緊張している状態で、舌は低位である。
それに対して、成熟嚥下は通常歯があり、頬とはくっつず、顎堤より前に出ず、口唇歯閉じている。
舌は縦にのびで上顎とくっつき食べ物を喉に押し出す状態である。
《低位舌が原因で起こること》
・頬の力で歯列は内側に傾き、高口蓋になり、狭くなる。
上顎骨が小さいということは鼻腔も小さくなり鼻中隔が湾曲し、狭くなり、鼻の通りが悪く、鼻詰まりの原因に
なる。
・側方方向だけでなく、前方方向にも力がかかり、上顎全体が小さくなり、舌は下顎を押しつけるため反対咬合原
因になる。
・低位舌がだと口からも空気が入りやすく口呼吸になりやすい。
しかし、口呼吸だから低位舌になる。とも言える。
・舌が臼歯間に残存することで、臼歯の圧下が起こり、過蓋咬合になる。
・舌突出癖が残存することで開咬になり、場合によってオーバージョットになる。
・舌全体が舌骨と共に沈下し、気道が狭小する。《口呼吸の特徴》
・アデノイド顔貌(上唇が上をむき、上顎前突、鼻の穴が見えて、小鼻が下がっている、顎が後退、
姿勢が悪い(前のめり))
・口を開けてもらった時に喉の奥が見えない。
《口呼吸の問題点・特徴》
・口唇閉鎖不全
・免疫の崩壊
・扁桃腺の肥大により、気道の狭窄が起こり無呼吸につながる。
・睡眠時呼吸障害になり、睡眠時の呼吸ができないと成長ホルモンが入らず、低身長や肥満になる。
脳へのダメージもあり、記憶を司る部分が萎縮していく。
・漏斗胸になる可能性もある。
・頚椎が曲がり、顎が後退し、面長になる。
・息が浅く早いため、血中酸素濃度が低下する。
《口呼吸の治療》
・MFT
・舌小帯切除
・アデノイド除去
・鼻詰まり改善
・矯正で上顎を大きくする
・出生時期からの口育
《気道狭窄による姿勢への影響》
・軌道を開こうとするため、顎が前に出て首が曲がり、顎が後退する。
・顎が下がると肩も下がり、舌骨が引っ張られるため、下顎がさらに引っ張られ、舌も上がりにくくなり、
ますます高呼吸が進む。
《口腔機能発達不全症の予防》
口育協会では乳児嚥下から成人嚥下へきちんと切り替えていくことが重要と考えている。
①上唇を下ろし、しっかりと口を閉じる。(離乳食初期)
②舌を上顎につける。(離乳食中期)
③舌を顎堤の内側に入れ、奥歯で噛む。(離乳食後期)
これを順番に行い神経を育てていく。
このステップを1つずつ順番にクリアしてくことが重要である。
《舌小帯短縮症(ハート舌)》
切る場合と切らない場合とどちらがよいかは今は賛否両論ある状態。現在は切らない方がよい。という考えが多
い。
《指しゃぶり、玩具なめ》
指しゃぶりは生まれてから0歳まではどんどんしたほうが良い。
吸啜の運動になり、原始反射が消えると言われてる。
玩具舐めも含めて、口周りの刺激を与えることが重要とされている。
《離乳食期》
見る、触る、感触、匂いなど、食べられるかどうかの判断を繰り返していきながら食べることが大切。
離乳食=トレーニングとして取り入れることが大切。
《離乳食の開始時期》
原始反射(探索反射・口唇反射・吸啜反射)の完全消失を目安。
舌挺出反射の消失(スプーンなどを舌で押し出す反射)があるうちは無理に食べさせない。
例:哺乳反射((乳児嚥下)母乳を飲む飲み方)が残ってる状態で固形物を当たると丸呑みする癖がついてしまう。
○離乳食初期(5、6ヶ月ごろ)
①上下更新を閉じて食べる練習をする。
平たいスプーンを下口唇の上におき、自ら口を閉じて捕食する。
②液体部分がない均等なペースト状にする。
③スパウト、ストローは使わずコップ飲みをする。
硬いプラスティックの吸い口では 舌がその下に位置し低位舌を誘発する。また、乳児嚥下の残存を引き起こ
す。この時期はコップで飲めなため、母乳や哺乳瓶で水分補給を行う。
④椅子は少し後ろに倒す。(喉に流れ込みやすくするため)
○離乳食中期(7、8ヶ月ごろ)
口をしっかりと閉じ、左右に口角がぎゅっと収縮するようになった頃、舌を上に上げて食物を潰し、咽頭に送り
込む成熟嚥下の練習をする。
①舌で押しつぶすトレーニング
②上口唇を下げる。
離乳食を与える際にスプーンを下口唇に 乗せるように置き上口唇が下りて捕食させる。
③コップ飲みの練習
○離乳食後期(9、10ヶ月ごろ)
食べる際、口の形が左右非対称になったら始める。
臼歯部の歯茎で食べることで、舌を顎堤内に入れて食べる練習をする。
①奥歯咬みの確立
②すすり飲みの確立
コップ飲みを行うことで上唇をすぼめる機能訓練が口唇閉鎖に繋がる。
③足をつけて極端な前傾姿勢にならないように気をつけて座る。
○離乳食完了期(12ヶ月以降ごろ)
①手づかみ食べ
②1歳半を目安に卒乳
③ストローの使用を控える
④臼歯の生え方を見て更に硬い食材を食べる。
《その他に》
はいはいを沢山させることで首周りの筋肉も発達していく。
顔面マッサージをすることで慣れていき、原始反射の除去に繋がる。
歯固めは歯根膜が発達していくため、使用した方が良い。
《来院した際のチェック項目》
例:
□ 母親のビタミン K の摂取状態<妊活~妊娠期>
□ 母親の鉄の摂取状態<妊活期~母乳育児期>
□ 哺乳指導<妊娠期~生後6か月程度>
□ K2 シロップの摂取について<妊娠期~生後3か月>
□ 母乳育児、混合育児の場合は BabyD などのビタミン D サプリを与える<妊娠期~1歳>
□ ダニ対策について<出産~小児期>
□ おもちゃ舐めや指しゃぶり<出産後~生後1歳>
□ 原始的生活が顎の発育を良くする<出生後~小児期>
□ BLW について<離乳食開始前~離乳食期>
□ マグマグやストローの使用について<離乳食開始前~小児期>
□ コップ飲みについて<離乳食開始期~小児期
□ 離乳食開始の時期<離乳食開始前>
□ 離乳食初期<離乳食開始前>
□ 離乳食中期<離乳食開始前~初期>
□ 離乳食後期<離乳食開始前~中期>
□ フロスの使用(歯が生えてきてから~)
□ 仕上げ磨きはガーゼ拭き(歯が生えて来てから~2歳)
□ 感染予防(歯が生えてきてから~2歳7か月乳歯列の完成)
□ フォローアップミルクの使用(生後9か月~3歳)
□ 日光に浴びる機会を増やす(1 歳~小児)
□ 野菜、炭水化物、肉を1:1:1の比率ぐらいで与える(離乳食開始期~小児)
□ 大きな声で騒いだり遊んだりできる環境を(1 歳~小児)
□ 砂糖入りお菓子や飲料は3歳まで与えない。(1歳~小児)
《1歳半以降》
・う蝕予防
・口腔機能管理
① 前歯から奥歯までしっかり使って咀嚼させるように、コシのある食材、スルメのような噛み応えのあ る食材、
硬い煎餅のような食材などを与えます。
②味噌汁などの流し込み食いにならないように、御飯の前後に味噌汁を飲ませ、しっかり御飯やおかず を咀嚼させて唾液によってドロドロにして飲み込ませるようにします。
③引き続きストロー飲みなどを避けてコップ飲みにします。
《2~4歳》
①Myomuncheeの使用

②片目のおやつを与える栄養指導
例:するめ、ハードグミetc
③口育歌体操(あいうべ、パタカラを強調した替え歌)
口育協会でのYouTubeに歌がある。
④口育英会話による英語の発音によって舌の強化
⑤風船、吹き戻し、口笛、風車などの息を吹く遊びを行う。
⑥その他の口腔周囲筋を強化するトレーニング
例:リップマッサージ

舌の体操

ぺろぺろ体操

あいうべ体操
唇の体操
ガムトレーニング
鼻なめ etc
《MFT》
特によく使われる基本形6パターン
①スポットポジション
スポットの位置を教え常に舌先がスポットに置くよう指示 ※基本的に舌の位置が低位であるケースがほとんどなので、まずは正確な舌の位置を覚えさせる必要があります。
②ポッピング
舌全体を上顎に張り付け「ポン」と音を出すように上顎からはがす ※基本的に舌が弱く上がらないケースが多いので、舌全体を上にあげる筋トレ的なトレーニングになりま す。
③サッキング
舌の横から唾を勢いよく吸い上げる。 ※実際に口輪筋などの口の周りを収縮させて唾を飲み込む異常嚥下に対し正常な唾の飲み方は舌の横から 吸上げるように舌の上に持って来きます。これはほとんど舌しか使わない運動になりますので、口輪筋や オトガイ筋を収縮させない嚥下になります。舌の後方部をへこませて陰圧を作り吸い上げるので、サッキ ングが弱々しい場合は「カッスワロー」のような英語の「k」のような発音(クックックと笑うような発 音)の練習を行う必要性があります。
④トラップ
舌の横から吸上げた唾を舌の上に Keep する。
⑤サッキングスワロー
サッキングで吸い上げた唾を舌の上にキープしてそのまま嚥下する。
⑥カ・スワロー 英語の[k]の発音、「か」というより「く」に近い発音。サッキングなどを行う舌後方部を鍛えます。
《MFTアプライアンス(装置)の効果》
① 口呼吸が物理的にできなくなる。
②頬筋や口輪筋からの圧力を排除する事で顎が拡大される。
③ 舌が上下歯牙の間にある場合、強制的に内側に入れる事になるので臼歯の挺出を促す。
④口腔底に沈みこんでいる舌を物理的に持ち上げる。(舌骨の挙上)
⑤叢生を改善する矯正効果がある。
⑥ 一級咬合に誘導する。(場合によっては下顎骨体ごと移動する。)
⑦上顎前歯前突がある場合、口蓋側移動。
⑧下顎前歯の後退がある場合、唇側移動。
⑨臼歯舌側傾斜を引き起こす効果があり、臼歯の挺出と合わせて咬合が上がる。
⑩口輪筋や頬筋を収縮させて嚥下する事が出来なくなり舌だけを使って嚥下する練習を行えます。(昼の装着の場合)
○装置例
・MyoMunchee
・Myo Bace
・プレオルソ
・インビザライン etc
※口腔機能発達不全症に対する指導やMFTは保険で行うことが可能である。
《考察》
今回、口育について学んだことで、歯並びや噛み合わせの問題は単に歯の生え方だけが原因ではなく、舌の位置や飲み込み方、呼吸の仕方などの口腔機能が大きく関係していることがわかった。特に、乳児嚥下が残存したり、低位舌や口呼吸が続いたりすることで、歯列不正や顎の発育不全だけでなく、睡眠や全身の健康にも関わることがわかった。また、離乳食期の進め方について、月齢だけでなく、口腔機能に合わせて段階を踏んで開くことの重要性と、歯科から発信できる点があると学んだ。
今後は、口腔内だけに注目するのではなく、呼吸や姿勢、筋機能など全身との関連も意識していきたい。また、乳幼児期の保護者の方に対して、歯だけでなく、食事から歯列に関係する話も伝え、口腔機能発達不全症の予防や早期発見に繋がるように努めていきたい。
